抄録
【目的】後脛骨筋の過緊張により立位アライメント不良が生じ,立位バランスが低下した四肢体幹失調患者に対し,短下肢装具で足関節を固定し立位アライメント及び立位バランス改善の効果を検証した。また,装具を取り外した直後の持続効果を利用した理学療法アプローチを実施した。【症例】30歳代男性,動作時の後脛骨筋が過緊張で立位において足関節が底屈内反位であった。そのため立位アライメントが不良となり,立位保持時間5秒,歩行は歩行器で中等度介助であった。【介入】両側下肢に短下肢装具を装着し足関節を固定した。装具の装着前,装着時,取り外し直後で立位アライメント,立位保持時間,重心動揺の変化から装具の効果を検証した。また,その立位アライメントの修正効果を利用して立位バランス練習,歩行練習を4週間実施した。【結果】装具装着により立位アライメントは改善し,立位保持時間は2分以上となり,重心動揺の改善がみられた。また,装具を取り外した直後にも立位アライメントの改善と立位保持時間の延長が持続する傾向がみられた。アプローチ開始から4週間後,装具なし,4点杖での見守り歩行が可能となった。【考察】失調症により足部の筋緊張が原因で立位バランス障害を呈する本症例に対して,短下肢装具を用いて立位アライメントを修正することは立位バランス改善に効果的であり,装具を取り外した直後の持続効果を利用した理学療法アプローチは有用である可能性がある。