日本水処理生物学会誌
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環境水中でのフェノール分解に及ぼす各種ウキクサの影響
李 彦遠山 忠田中 靖浩湯 岳琴呉 曉磊森 一博
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2014 年 50 巻 3 号 p. 95-103

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抄録
本研究では,ウキクサ,コウキクサ,アオウキクサ,ミジンコウキクサの4種類のウキクサ類が環境水中でのフェノール分解に及ぼす影響を検討した。フェノールを添加した環境水に各ウキクサ類を植栽しフェノール濃度の経時変化を連続バッチ栽培系で調べたところ,非植栽対照系に比べて顕著な除去速度の向上が確認された。また,無菌化したウキクサ類を滅菌処理した環境水に植栽した場合にはフェノールの除去は観察されなかったことから,ここで観察されたフェノール除去は,ウキクサ類による吸収等の直接的な作用ではなく微生物による分解作用によるものであり,ウキクサ類によりその作用が大きく促進されることが示唆された。そのような促進作用は,各除去速度の比較から,特にウキクサとミジンコウキクサで優れていることが示された。供試ウキクサ類から微生物を回収し解析した結果,Pseudomonas spp., Delftia spp., Azospirillum spp., Acinetobacter spp., and Zoogloea spp.を含む多様なフェノール分解微生物が分離された。これらの分離株をその分離源となった各ウキクサ類の破砕抽出物を添加したフェノール無機栄養塩培地で培養した結果,破砕抽出物を含まない対照系に比べて増殖あるいはフェノール分解作用の増進が観察された。以上の結果より,ウキクサ類はフェノール分解微生物の増殖やフェノール分解を促進しており,その栽培系はフェノール汚染水の浄化に優れた効果を示すことが結論づけられた。
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© 2014 日本水処理生物学会
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