抄録
畜産業以外の産業排水への実規模レベルでの適用としてわが国で初めての事例と考えられるペットボトルリサイクル工場廃水を浄化処理する実規模の人工湿地を調査対象として、稼働開始から29ヶ月間の処理性能を評価するとともに、その結果判明した濾床の目詰まりの季節性とその要因を明らかにするための再現実験を行った。調査対象としたペットボトルリサイクル工場廃水のBOD5:N:Pは、100:0.30-0.43:0.01-0.02であり、窒素とリンの比率が極めて低い特性を有していた。稼動開始から29ヶ月間の人工湿地による処理におけるBOD5、CODCr、T-N、T-P及びSSの除去率は、それぞれ78、77、76、81及び65%であり、処理開始から2年を経ても安定した浄化性能は達成されず、BOD5では排水基準を満たせない時期があった。調査対象とした人工湿地の浄化性能は稼動開始から2年目に低下し、特に冬期間の浄化性能が著しく低かった。これは目詰まりによって処理対象水が濾床を通過せずに系外に排出されるオーバーフローが起きていたことによることが明らかとなった。人工湿地の前処理で用いられている有機系高分子凝集剤の生物分解性と有機系高分子凝集剤による人工湿地濾床の目詰まりの再現実験の結果より、この目詰まりは有機系高分子凝集剤の流入が引き金となって生じたことが示唆された。本調査により、人工湿地の前処理として凝集沈殿を採用する場合には、凝集剤の有するリスクを考慮する必要があることが明らかとなった。