抄録
本研究では、し尿及び浄化槽汚泥と農業集落排水汚泥を併せて処理・資源化するし尿・汚泥集約処理センターの整備事業を、環境省と農林水産省の共同処理事業として実施した国内初の事例を研究対象とした。共同処理事業の事業計画では、し尿・汚泥集約処理事業と農業集落排水処理事業、各々の観点と両省事業の整合を図りながら、共同処理事業の基本諸元、事業計画、概算事業費、事業費アロケーション及び財源計画に関する検討を行った。共同処理事業と単独処理事業(各省による施設単独施工)の比較、共同処理事業における移動脱水車の導入効果なども検討し、策定した事業計画の優位性を検証した。共同処理事業とすることで、衛生処理の安定継続とLCAの観点からみた環境負荷の軽減、資源化製品の品質確保と安定供給、地域資源循環による環境保全型農業の推進、施設整備運営に伴う財政負担の軽減等が可能になることが分かった。し尿・汚泥集約処理事業や農業集落排水処理事業など、下水道事業と比べ比較的小規模な生活排水処理事業に関しては、共同処理事業が極めて有効な事業手法であることが示唆された。