本研究では、4-
tert-ブチルフェノール(4-
t-BP)分解菌
Sphingobium fuliginis OMIを用いてラボスケール膜分離活性汚泥法(MBR)へのバイオオーグメンテーションを実施した。バイオオーグメンテーションを実施しない対照系では、土着菌の4-
t-BPへの馴致に1か月を要したのに対し、バイオオーグメンテーション系では流入水に含まれる4-
t-BP(10-20 mg/L)を試験開始7日以内に検出下限値未満(<1mg/L)まで除去できるようになり、35日目までこれを維持した。また、MBR槽内に残存するOMI株数の指標として活性汚泥に含まれるカテコール2,3-ジオキシゲナーゼ(C23O)遺伝子を定量したところ、バイオオーグメンテーション系では試験開始17日目まで対照系より多くのC23O遺伝子が存在した。これらの結果から、MBRは導入菌の流出を阻止し処理成績を維持することができるという点において、バイオオーグメンテーションの適用に適した廃水処理法であることが示唆された。しかしながら、本研究ではバイオオーグメンテーション系において膜ファウリングがより頻繁に観察された。これは導入したOMI株によって引き起こされた可能性があり、MBRにおけるバイオオーグメンテーションを成功裏に実施する上では膜ファウリング問題への取り組みも重要であると考えられた。
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