日本水処理生物学会誌
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54 巻, 1 号
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報文
  • 高田 一輝, 志波 俊彦, 惣田 訓, 井上 大介, 三宅 將貴, 江口 正浩, 池 道彦
    原稿種別: 報文
    2018 年 54 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では、4-tert-ブチルフェノール(4-t-BP)分解菌Sphingobium fuliginis OMIを用いてラボスケール膜分離活性汚泥法(MBR)へのバイオオーグメンテーションを実施した。バイオオーグメンテーションを実施しない対照系では、土着菌の4-t-BPへの馴致に1か月を要したのに対し、バイオオーグメンテーション系では流入水に含まれる4-t-BP(10-20 mg/L)を試験開始7日以内に検出下限値未満(<1mg/L)まで除去できるようになり、35日目までこれを維持した。また、MBR槽内に残存するOMI株数の指標として活性汚泥に含まれるカテコール2,3-ジオキシゲナーゼ(C23O)遺伝子を定量したところ、バイオオーグメンテーション系では試験開始17日目まで対照系より多くのC23O遺伝子が存在した。これらの結果から、MBRは導入菌の流出を阻止し処理成績を維持することができるという点において、バイオオーグメンテーションの適用に適した廃水処理法であることが示唆された。しかしながら、本研究ではバイオオーグメンテーション系において膜ファウリングがより頻繁に観察された。これは導入したOMI株によって引き起こされた可能性があり、MBRにおけるバイオオーグメンテーションを成功裏に実施する上では膜ファウリング問題への取り組みも重要であると考えられた。
  • 張 健, 稲森 隆平, 陶村 貴, 馮 伝平, 徐 開欽, 稲森 悠平
    原稿種別: 報文
    2018 年 54 巻 1 号 p. 13-27
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,複槽式活性汚泥法への自動酸素供給装置(Automatic Oxygen Supply Device: AOSDと呼称)システムの導入により,維持管理性の容易化と電力削減および有機物と窒素の除去性能を向上させ,生物処理を安定化させることを比較解析した。また,蛍光式とポーラロ式の溶存酸素(DO)センサーを用いて処理性能の安定化のための維持管理性を踏まえたAOSDシステム導入自動制御における蛍光式DOセンサーの優位性を嫌気・好気活性汚泥法を対照系として比較解析した。蛍光式DOセンサー設置系では,生物化学的酸素要求量(BOD),全窒素(TN),およびアンモニア態窒素(NH4-N)の除去率は,それぞれ96±1%,80±2%,および97±1%であり,安定した性能が得られ、同時に微生物の活性化および汚泥の凝集能が促進された。対照系では,それぞれ94±2%,70±9%および97±1%であったが、性能の不安定さが確認された。AOSDシステム導入複槽式活性汚泥法の一日の電力消費量は,従来法の嫌気・好気活性汚泥法と比較して56%減少した。また,ポーラロ式DOセンサーは維持管理頻度が高く,蛍光式DOセンサーの優位性が認められた。蛍光式DOセンサーとAOSDシステム制御を導入した複槽式活性汚泥法においては,高い除去性能と省エネルギー化の達成が可能であり,電力削減高度処理システムとして適用可能であることが明らかとなった。
  • 松田 圭二, 岩堀 恵祐
    原稿種別: 報文
    2018 年 54 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では、し尿及び浄化槽汚泥と農業集落排水汚泥を併せて処理・資源化するし尿・汚泥集約処理センターの整備事業を、環境省と農林水産省の共同処理事業として実施した国内初の事例を研究対象とした。共同処理事業の事業計画では、し尿・汚泥集約処理事業と農業集落排水処理事業、各々の観点と両省事業の整合を図りながら、共同処理事業の基本諸元、事業計画、概算事業費、事業費アロケーション及び財源計画に関する検討を行った。共同処理事業と単独処理事業(各省による施設単独施工)の比較、共同処理事業における移動脱水車の導入効果なども検討し、策定した事業計画の優位性を検証した。共同処理事業とすることで、衛生処理の安定継続とLCAの観点からみた環境負荷の軽減、資源化製品の品質確保と安定供給、地域資源循環による環境保全型農業の推進、施設整備運営に伴う財政負担の軽減等が可能になることが分かった。し尿・汚泥集約処理事業や農業集落排水処理事業など、下水道事業と比べ比較的小規模な生活排水処理事業に関しては、共同処理事業が極めて有効な事業手法であることが示唆された。
ノート
  • 中村 允, 山際 秀誠, 東裏 典枝, 解野 誠司, 前田 拓也
    原稿種別: ノート
    2018 年 54 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー
    ユーグレナの排水処理技術への応用を目的として、和歌山県内からユーグレナのスクリーニングを行った。DNA塩基配列解析、分子系統解析、RAPD (Random amplified polymorphic DNA) 解析を行い、得られた分離株(Kishu株)がEuglena gracilis種であることを明らかにした。また、従属栄養培養における、世代時間および資化性を調べたところ、分離株は、既存株よりも早く増殖し、炭素、窒素、リン源の消費速度も速いことが明らかになった。さらに廃糖液を用いた培養試験でも増殖が良好であり、廃糖液の炭素源も除去できたことから、食品加工場の排水処理に利用できることが示唆された。
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