日本水処理生物学会誌
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2007年-2017年の琵琶湖南湖における,溶存態かび臭物質2-メチルイソボルネオールの発生機構
横井 貴大野口 暁生古田 世子池田 将平一瀬 諭竹本 邦子勢川 利治小倉 明生
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2020 年 56 巻 3 号 p. 47-55

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抄録

 かび臭は水道水のおいしさに関わる重要な問題であり,かび臭原因物質の1つである2-メチルイソボルネオール(2-MIB)については,2004年に水質基準に設定された。琵琶湖南湖を水源とする京都市蹴上浄水場の着水では,1988年-1994年にかけて,5月-6月にPhormidium tenueによる2-MIB,9月-10月にはOscillatoria tenuisによる2-MIBが発生していた。しかし2007年-2017年については,2013年及び2014年にP. tenueによる2-MIBが発生したのを除き,2-MIB発生期間でも,P. tenueO. tenuisが観察されない状況が続いていた。そこで,溶存態2-MIBの割合についてみると,1988年-1994年は平均60%であったが,2007年-2017年は平均92%と,溶存態の割合が高くなっていた。また,淀川水質汚濁防止連絡協議会による2010年-2017年の南湖調査では,直上水の全量2-MIB濃度が表層水よりも高くなっており,湖底に繁茂する沈水植物上にP. tenueが付着していたと報告されている。そこで,南湖で単離されたP. tenue PTG株を複数の光条件下で培養したところ,南湖湖底と同程度の弱光条件下で,溶存態2-MIB産生能が高くなることがわかった。以上のことから,2007年-2017年に琵琶湖南湖で発生した溶存態2-MIBは,沈水植物上に付着したP. tenueが原因であると考えられた。

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