2020 年 56 巻 3 号 p. 57-66
微細藻類は化石燃料に代わる再生可能なバイオ燃料の原料として注目されているが,その燃料生産の実用化に向けては微細藻類の油脂生産性を高めることと,微細藻類培養コストを削減することが重要課題となっている。そこで本研究では,クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)をモデル微細藻類として実験に供し,下水処理水と有機性廃棄物を利用した混合栄養培養によるクラミドモナスのバイオマス生産性と油脂生産性の向上ついて検討した。合成C培地あるいは下水処理水に市販の有機化合物(グルコース,フルクトース,スクロース,酢酸塩)あるいは有機性廃棄物(廃糖蜜とコーンスティープリカー)を一種類ずつ添加した培養液でクラミドモナスを培養した。その結果,クラミドモナスは合成C培地だけでなく下水処理水を用いた培養においても増殖し,油脂を生産した。この結果から,下水処理水は安価な培養液としてクラミドモナス培養に応用できることが明らかとなった。また,実験に供した有機物のいずれかを添加した混合栄養培養によって,クラミドモナスのバイオマス生産性が向上した。本研究で検討した培養条件の範囲では,合成C培地に廃糖蜜1g/Lを添加したクラミドモナス混合栄養培養において,最高のバイオマス生産速度(86 mg-dry cell/L/d)と油脂生産速度(34 mg/L/d)が得られた。また,下水処理水に廃糖蜜1g/Lを添加したクラミドモナス混合培養においても,高いバイオマス生産速度(73 mg-dry cell/L/d)と油脂生産速度(27 mg/L/d)が得られ,この値は光独立栄養培養や他の有機物を添加した混合栄養培養の結果よりも高くなった。したがって,廃糖蜜はクラミドモナスのバイオマスと油脂の生産性を高める成分を有しているものと示唆された。以上の結果から,下水処理水と廃糖蜜を利用した混合栄養培養は,クラミドモナスを原料とした燃料生産の経済性と生産性を高める有望な培養法であることが示された。