熊本市とその近隣市町村を含む地域は「熊本地域」と呼ばれており,そのおよそ100万人の人口に要する飲用水の100%を地下水で賄っている世界的にも珍しい都市域である。本地域の地下水は今なお豊富かつ清涼ではあるものの,近年は地下水位の減少や水質の悪化が懸念されている。筆者は約15年前から本地域の地下水に関わり,主に水質保全に関する研究を行ってきた。本稿では,熊本地域における地下水の成り立ちと流動を踏まえた上でその水質の特徴について論じる。また,現在,世界中の地下水質の課題にもなっている硝酸態窒素による水質への影響に関する知見を示し,最後に2016年に発生した熊本地震による地下水質への影響について述べる。