日本水処理生物学会誌
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侵略的外来水生植物の代謝産物がミジンコ休眠卵の孵化に及ぼす影響
林 紀男
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2024 年 60 巻 1 号 p. 19-24

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抄録

 千葉県北西部に位置する手賀沼には特定外来生物に指定された侵略的外来水生植物のナガエツルノゲイトウ,オオバナミズキンバイ,ミズヒマワリ,オオカワヂシャなどが繁茂を広げている。特にナガエツルノゲイトウとオオバナミズキンバイは沼岸に浮島状群落を形成し生育地を巡り拮抗関係にある。両種の浮島状群落下ではプランクトンの出現種構成には差異が認められないものの,密度が低減していること,両種が共存し拮抗関係にある浮島状群落ではプランクトン密度低減が大きいことが明らかとなった。また,浮島状群落下で採取・濾過した水およびミジンコ休眠卵を用いた休眠打破試験では,休眠打破に外来水生植物の産生する他感作用(アレロパシー)物質が関与していることが示唆された。特にナガエツルノゲイトウとオオバナミズキンバイが拮抗関係にある浮島状群落下で採取・濾過した水では,ミジンコ休眠卵の休眠打破が完全に阻害される事実が認められた。ナガエツルノゲイトウとオオバナミズキンバイは排水機場の目詰まり等に起因した治水リスクが顕在化しているが,揚水機場を経て農地灌漑される水に包含される外来水生植物由来の溶存性の代謝産物にも水田の生物相に影響が及ぶ懸念があることが明らかとなった。

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© 2024 日本水処理生物学会
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