紙パ技協誌
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省エネルギー特集 I
有機性排水からの効率的なエネルギーの回収
山下 雅治
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2005 年 59 巻 5 号 p. 675-680

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抄録

活性汚泥法に代わる有機性排水の効率的な処理方法として, メタン発酵法が昔から知られている。メタン発酵法は, メタン菌を中心とする嫌気性菌群が共同して, 排水中の有機物であるBODをメタンガスと二酸化炭素に分解する。この分解工程では, 活性汚泥のようなBODの酸化分解の為の酸素の供給が不要であり, 余剰汚泥発生量も活性汚泥と比較して極めて少ない。また, メタン発酵により発生するメタンガスを主成分とするバイオガスは, 良質な燃料としての再利用が可能である。
しかし, 反応容器 (リアクタ) 内に嫌気性微生物群を高濃度に維持する技術がなく, 反応効率の面からその適用は限定的であった。
1980年代からUASB法 (Up-flow Anaerobic Sludge Bed法) が開発・普及され, 嫌気性微生物はグラニュール汚泥と呼ばれる自己集塊化ペレットとしての活用が可能となり, その処理効率は活性汚泥の10~20倍に飛躍的に向上した。更に, 1995年以降にUASB法を改良した高速メタン発酵処理法が提案され, メタン発酵法の適用範囲が広がってきた。
当社では, ビール工場, 焼酎工場, 化学工場, 一般食品工場, 紙パルプ工場等にICリアクタの商品名にて納入をし, 有機性排水を効率的に処理すると共に, 同時にメタンガスをバイオガスとして回収し, それを利用する設備を提案してきた。
本紙ではその実例を紹介し, 紙・パルプ製造排水処理におけるメタン発酵処理設備の普及の可能性について述べる。

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© 2005 紙パルプ技術協会
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