紙パ技協誌
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新入社員歓迎号
苛性化軽カルの填料・顔料への利用
金野 晴男
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2009 年 63 巻 4 号 p. 374-377

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抄録

日本製紙ではクラフトパルプ化の薬品回収工程である苛性化工程で副生する炭酸カルシウム(ライムマッド)を填料・塗工顔料として利用している。当社ではこの炭酸カルシウムを「苛性化軽カル」と呼んでおり,填料・塗工顔料へ利用するとともにキルンでの重油使用量削減につなげている。特に,近年の原油価格の高騰により,キルンでの重油使用量削減の経済効果はより顕著になっている。また,植林木チップの使用増加に伴ってリン等のノンプロセスエレメントが薬品回収工程内に蓄積する問題についても,「苛性化軽カル」を使用することによって,ノンプロセスエレメントが工程内から抜き出されるため,この問題を回避することができる。上記のような多くのメリットがあるものの,開発段階では様々な困難があり,「苛性化軽カル」生産を安定的に行うために,長年にわたる研究・技術開発を継続し,現在に至っている。
本報告では苛性化軽カルについて概説した後に,当社がこれまでの研究・技術開発によって確立してきた,(1)塗工顔料製造技術,(2)形態制御技術について紹介する。さらに「苛性化軽カル」利用に伴う経済・環境に対するメリットである,(3)ノンプロセスエレメント除去効果,(4)キルン重油使用量削減効果について調査した結果を報告する。さらに「苛性化軽カル」技術の今後の可能性について述べる。

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© 2009 紙パルプ技術協会
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