紙パ技協誌
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総説・資料
高機能な複合型カチオンポリマーの製紙用薬剤への展開
村田 奈穂境 健自古塩 弘行三井 翔平吉岡 芳美
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2012 年 66 巻 5 号 p. 471-476

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抄録

古紙利用率の増加に伴う原料品質の悪化,中性抄紙化,抄紙系内のクローズド化等,抄紙環境が厳しさを増す中で,古紙由来のピッチ等による欠点やマシン汚れへの対策は重要である。
ピッチトラブルの対策として,カチオン系凝結剤を用いてマイクロピッチ(ピッチ発生の原因物質となるミクロン単位の物質)を粗大化させることなくパルプに定着させ,抄紙系外に排出させる方法は有効である。
今回,ピッチコントロールの更なる効果向上と多種多様な条件への対応を目指して,3種の高機能な複合型カチオンポリマー,ハイモロックFR―701H,FR―801,MT―910を開発した。
FR―701Hは特殊ディスパージョンであり,高いカチオン密度と適度な高分子量成分を含んだ複合成分を有している。FR―801も特殊ディスパージョンであり,FR―701Hとは異なった組成で高いカチオン密度と適度な高分子量成分を実現している。MT―910はカチオン密度をやや低く設計した上で疎水性を導入したエマルジョンであり,適度な高分子量に調節している。
このようにそれぞれ異なる特徴を付与させたことによって,これらのカチオンポリマーは各種紙料で従来の凝結剤よりも高いピッチコントロール効果を発揮した。さらに,濾水性,搾水性やサイズ剤の定着についても効果の向上が確認され,製紙用薬剤として多機能な性能が期待できる。
本稿では,これらカチオンポリマーの特徴,作用機構,それぞれの効果が発揮された試験結果について,従来の画像解析技術を応用した紙表面ピッチの評価結果を含めて報告する。

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© 2012 紙パルプ技術協会
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