紙パ技協誌
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総説・資料
流動床ボイラに見られる高温侵食摩耗とその防止に関する2,3の試み
木村 忠司白石 陽一
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キーワード: U4ボイラ, U0その他
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2016 年 70 巻 10 号 p. 1039-1043

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抄録

循環流動床ボイラでは燃料と媒体を高温環境下で流動して燃焼させており,ボイラに使用される部材の侵食摩耗が深刻な問題となり,設備の稼働率と経済性の課題がある。

ここでは,ボイラ火炉内の水冷壁パネルおよび炉底に取り付け媒体を浮遊させ酸素を供給する流動化ノズルを想定して,高温ブラスト摩耗試験を実施し,高温での耐侵食摩耗策について検討した。その結果をまとめると以下の通りである。

表面温度が約400℃の水冷壁パネルの耐侵食摩耗策としては,耐熱・耐食材料で,熱膨張係数が母材とほぼ同程度で,溶接性も良好なNi基材料,例えばAlloy 625などの延性材料を使用する肉盛溶接が適している。

表面温度が約800℃の高温にさらされる流動化ノズルの耐侵食摩耗策としては,高温まで硬さを維持するCo基材料,例えばステライトNo.12等が適しているように思われるが,セラミックス添加材も含めてさらに検討が必要である。

侵食には引っ掻き摩耗と剥離摩耗の2つの形態がある。引っ掻き摩耗は摩耗性粒子が物体表面に衝突する際に,表面に溝あるいはクレータを生じさせ,衝突したごく近傍を隆起させる。主に延性のある材料に見られる。一方,剥離摩耗は摩耗粒子が衝突することにより結合力の弱い層状の膜が分離(剥離)する現象で,主に脆性材料に見られる。半溶融状態の材料が適度にあらされた表面に噴射され,幾層にも重なってできた硬質の溶射皮膜は脆性である。

今後は循環流動床ボイラにおける肉盛溶接材料の耐侵食摩耗特性についてさらに調査を行うとともに,実機における適用効果を明確にする予定である。

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