2018 年 72 巻 6 号 p. 629-632
クラフトパルプ回収サイクルにおいて,塩化物とカリウムが系内に蓄積され,濃縮された塩化物とカリウムによってダストの融点が低下し,ボイラーの閉塞,ひいては能力の低下や腐食につながることが知られている。この対策として電気集塵機灰の廃棄をする方法があるが,これは回収サイクル内におけるソーダの損失を意味し,ソーダを補給する費用が増大する。また既存の対応技術としては塩化物,カリウム濃度の低減のため電気集塵機捕集灰を水に溶かし,イオン交換樹脂で処理する方法,冷凍式晶析システムを用いる方法などが存在する。しかしこれらの既存技術は高価な運転コスト等の問題がつきまとい世界中で普及するシステムには至っていない。それらの既存技術よりさらに効率の良い加熱式の蒸発・晶析法を用いた脱塩脱カリ装置CRPTMという技術があり,世界中で実績を積み上げてきた。実設備としてCRPTMが稼働している南アフリカ,Mondi社では,CRPTM稼働後,塩化物濃度の低減が確認でき,ボイラー閉塞の軽減や蒸気発生量の増加等のメリットが確認されている。Mondi社での操業経験を交えて,蒸発・晶析法を用いた脱塩脱カリ装置CRPTMを紹介する。