紙パ技協誌
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CNF/研究・開発特集
山林用苗木の生産技術開発
根岸 直希中浜 克彦浦田 信明田邊 稔明
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キーワード: A4木材資源と需給
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2019 年 73 巻 2 号 p. 120-122

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抄録

日本国内の森林は,戦後に植林されたスギやヒノキなどの人工造成林が木材として利用可能な段階を迎えており,日本製紙が九州地区に所有する約1万8千ヘクタールの社有林も同様に伐期を迎えた森林が年々増えている。こうした状況の下,当社では再造林の際,従来の種苗より成長に優れ,花粉量が少ないなどの特徴を持つスギ特定母樹を積極的に導入することとしている。スギ特定母樹とは「森林の間伐等の実施に関する特別処置法の一部を改正する法律(間伐等特措法)」に基づき,森林のCO2吸収固定能力の向上のため,農林水産大臣により指定されたものである。しかし,スギ特定母樹の苗木は普及が十分に進んでいないため,当社がこれまで培った海外植林技術を活用して,スギ特定母樹の効率的な挿し木生産技術を開発し,大規模な採穂園の造成,早期増殖の取組みを開始した。日本製紙八代工場(熊本県八代市)が熊本県人吉市に所有する土地に,独自技術を用いて増殖に取組んだスギ特定母樹824本を植栽した。今後順次拡大を図りながら,2019年までに1万4千本の採穂園を造成する。今後は,熊本県内の種苗生産者の協力を得て,2023年からは年間約28万本の挿し木苗を生産していく。また,需要動向に応じた増産,積極的な外販を進めることにより,社有林に限らない九州地区における苗木の安定供給,植林木の確実な更新にも寄与していく。

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© 2019 紙パルプ技術協会
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