紙パ技協誌
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抄紙機におけるCD品質の最適化によるコスト削減
―第5世代自動紙試験機の活用―
依田 裕道
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キーワード: Q6紙板紙品質試験法
ジャーナル 認証あり

2024 年 78 巻 4 号 p. 281-287

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抄録

2050年までのカーボンニュートラルな日本にするために,産業界全体への生産プロセスの改善・転換のプレッシャーが年々強くなっています。また日本,そして素材産業ならではの問題として,人口の減少,魅力的なIT産業への人材流出により,素材産業は優秀な労働力を確保することが難しい状況にあります。一方で,「紙」は人に,そして環境に優しい最良の材料であり,近年の脱プラスチックの流れと新素材への期待から,今後多くの可能性を秘めた材料でもあります。

本稿では,抄紙機のCD品質の最適化を自動紙試験機で実施した事例について,ABBの最新機である第五世代自動紙試験機 Autoline-S/Lの特長を踏まえながら説明する。

抄紙機においてCD品質の安定化は永遠のテーマである。一般的かつ有効な手法としてQCSがある。QCSでは坪量,水分,灰分などの計測が可能だが,オンラインであることから直接紙に触れて計測する,強度特性は計測が出来ない。またロールに対してジグザグな計測であり,純粋なCD品質のばらつきを捉えることは出来ない。当然ではあるが,手動測定のよる紙試験では,機器や作業者数の点から,多点計測を実施することは出来ない。

ABBの第五世代自動紙試験機は,CDの複数の特性(透気度,平滑度,厚み,水分,破裂,引張,引裂,坪量など)を同時に計測することで,短時間で高精度な計測が可能である。製造直後のロールから試験片を採取し,最短10分でCD品質プロファイルを得ることが出来る。CD品質プロファイルから,プロセスの何を調整すべきか,見当をつけることが出来,ロールが製造されるたびに,適切な調整が可能となる。

過去の導入事例では,上記により生産性は1.5%向上,クレーム品は20%削減,薬品の過剰投入は5%抑制することが可能になった。また測定は完全に自動化,かつ高速であるため,計測者の人員削減という効果もあり,プロセスを改善しながら,固定費を下げることで,スムーズな投資回収を実現が可能になる

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