本研究は,セルロースナノファイバー(CNF)を食品に添加する提案の一環として実施した。CNFsはナノ物質であることから,食品に添加するためには包括的な安全性評価が不可欠である。そこで,竹(モウソウチク)からパルプを調製し,これを原料として酵素処理後にビーズミル処理でタケCNFsスラリーを製造した。得られたタケCNFsを使用した試験食品を用い,ヒトに対する非盲検の長期摂取安全性試験を実施した。試験協力者は疾病による治療を行っていない日本人成人男女22名であり,CNFsを1日当たり乾燥重量で1 gの摂取となるように12週間摂取した。試験食品は45 gのパウチ袋で製造し,この食品サンプル中のCNFs濃度は0.556%であった。パウチ袋1袋当たり乾燥重量で0.25 g相当のCNFsを含むため,試験協力者は朝に2袋,夜に2袋のサンプル食品を摂取した。試験の脱落者はなく,身体測定,理学検査,血液検査及び尿検査の値に有意な変動のある項目が認められたものの生理的または軽微な変動であった。また,排便の回数および量の増加傾向が生じたが,問題のある変化とは認められなかった。そのため,医学的に問題のある変化が生じたとは言えず,本試験の条件下では安全性に問題はないとする医学的判定を得た。