抄録
一般的に紙の「つぶれ」 (厚さ方向の残留歪み) について, 非塗工紙 (新聞用紙等) の場合, 紙の含有水分が多くなると紙の圧縮率が高くなり, 逆に弾性回復率が小さくなると報告されている。一方, 圧縮には「つぶれ」の発生しない, すなわち低圧かつ短時間の圧縮もある。
このような低圧かつ短時間の圧縮条件において, 塗工紙の圧縮試験を行った結果, 圧縮時と応力解放時の曲線がヒステリシスの挙動を示した.このヒステリシスが示す面積は, 含有水分量が変化すると同様に変化した。本研究では, 「つぶれ」の発生しない領域における塗工紙の含有水分と圧縮挙動について, ヒステリシスの面積に着目して検討を行った。ヒステリシスの面積の代表指標として, 「ヒステリシス歪み」を新たに定義し, 圧縮試験の結果を比較した。
今回の実験範囲において, (1) 含有水分量の増加による塗工紙のヒステリシス歪みは直線的に増大し, 原紙のみの挙動とほぼ一致すること, (2) 塗工層での圧縮がほとんどおきていないこと, (3) 原紙層と比べると塗工層にほとんど水分が含有していないことを確認した。
したがって, 塗工紙の含有水分とヒステリシス歪みに対して塗工層の影響がほとんどなく, 原紙層の影響下にあると考えられる。