抄録
今回は数ある問題点の中から原質・パルプ工程の付着物の洗浄にスポットを当て紹介する。原質・パルプ工程で付着し障害となる物質はスケールとピッチである。スケールは主に蒸解工程, 回収工程, 洗浄工程並びに漂白工程で発生する。この工程で見られるスケールは硫酸バリウム (BaSO4), シュウ酸カルシウム (Ca(COO)2), 炭酸カルシウムが殆どである。硫酸バリウム, シュウ酸カルシウムは木材由来で炭酸カルシウムは蒸解薬品由来である。このようなスケールの元となる無機粒子がスケール化するメカニズムには不明な点が多いが, 実際に付着した物を観察すると緻密な構造をしている物が多く, 無機粒子同士に強い接着力が働いているのが想像される。スケール成分の定性はIR測定によりそのスペクトルパターンから無機化合物を特定できる。又, 蛍光X線測定により各無機物の組成比率が分かる。これらの測定を実施する事により大抵の場合, 原因が特定できる。スケール洗浄剤としては主に, キレート剤, 界面活性剤, 苛性ソーダの組み合わせが使用される。一方, ピッチはクラフト蒸解の場合, 蒸解-洗浄工程では高アルカリの為, 樹脂酸ピッチはナトリウム塩 (R-COONa) として存在するため可溶化している。そのため, この工程での付着物はピッチが少なくリグニンが多い。晒し工程ではC段, D段で酸性となるので, 樹脂ピッチは不溶性のカルボン酸となって析出する。ピッチ凝集の因子としては, 1) 電気的な要因, 2) 物理的な吸着, 3) 温度等が挙げられる。各工程の付着ピッチはアルコール, ヘキサン混合溶剤による溶解率とIRにより容易に分析が可能である。現況, これらのピッチの洗浄剤としては苛性ソーダとカチオン+ノニオン界面活性剤の併用が多様化されている。