抄録
科学技術分野とは異なり、社会科学分野においては、専門文献を日本語で読むことが必須要件である留学生は少なくない。その際、専門辞書などに掲載された専門用語だけであれば、専門性が高ければ高いほど、母語でその概念を知っていればそれほどむずかしくない。一方、社会科学諸分野や学術分野全般でも使われる汎用性の高い語彙は、専門辞書に載っていないことが多く、その学習には予想外の困難を伴うことを筆者は長年の教育経験の中で痛感してきた。そこで、本研究では、社会科学系5分野の基礎文献計28冊で構築した大型コーパスを用いて、社会科学の各分野別二字漢語、社会科学共通二字漢語、学術共通二字漢語を統計的に特定することを試みた。その際、分析の途中で得られた知見は積極的に教育に応用するとともに、分析手法に教育の視点を生かすことができた。