専門日本語教育研究
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人文・社会学系優秀卒業論文の分析
引用の使用に関する基礎調査
矢野 和歌子
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2014 年 16 巻 p. 67-72

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抄録

本研究は、卒業論文の実情を踏まえた指導や教材の開発を目的とし、人文・社会学系の4大学4学部の優秀卒業論文計35編を対象に引用の形式、目的など、引用の使用実態について調査した。その結果、引用の形式としては、間接引用の使用が多いという傾向が明らかになった。また、段落単位での間接引用など、既刊の教材ではあまり扱われていない類型もみられた。留学生の論説文における引用の使用について調査した矢野1)との比較では、優秀卒業論文において、「論点を分析する観点の提示」、「解釈の提示」など幅広い目的で引用を活用していることが特徴として見られた。学部間の比較では、外国語学部、社会学部の論文全編で「論点を分析する観点の提示」を目的とした引用がなされていること、20編中17編で「解釈を提示する」目的での引用が見られる点が特筆できる。社会学部の論文では、「自己の主張の補強」を目的とした引用が全編で活用されていることも特徴である。また、商学部、経営学部の論文では、「先行研究の整理」をする目的での使用が多く、目的が限定的で引用の割合も少ないという傾向が見られた。これらの結果から、指導への示唆をまとめた。

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© 2014 専門日本語教育学会
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