抄録
沈香は東南アジアの熱帯雨林で採集される樹脂を多く含む心材で, 伝統的・宗教的儀式などの香料として珍重されている。我々は, インドネシアの南スラウェシ州と東カリマンタン州における沈香の採集, 評価・分類や取引, 栽培等の現状について, これらの仕事に携わっている採集者, 商人, 政府の役所 (林業省) を対象に現地調査した。沈香は非常に高価であることから, 森林の傍に居住する人々は生活のための収入源の一つとして沈香を採集している。また, 地域ごとに沈香の品質に関して異なる等級分類と価格相場があり, それらは外観的な色, 臭覚, 比重によって経験的に行われていた。世界的な需要増加にともない, 沈香資源は乱獲による枯渇が危惧されている。基原植物であるAquilaria属植物の資源保護のため, 沈香原木の栽培が実施されている。また, 栽培された沈香原木に種々の菌類を植菌し感染させることによって樹脂を含む香木へと人工的に誘導することも試みられており, その一部が成功している。この計画はインドネシア政府の研究によって支援されており, 沈香を栽培している採集者を対象にトレーニングが行われている。