Journal of Traditional Medicines
Online ISSN : 1881-3747
Print ISSN : 1880-1447
ISSN-L : 1880-1447
Review: Symposium in the 29th Annual Meeting of Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
Basic research on the use of Kampo medicines to protect against cancer recurrence and metastasis
Sumiko HyugaToshihiko Hanawa
著者情報
キーワード: cancer, metastasis, maoto, Ephedrae herba, c-Met, HGF
ジャーナル フリー

2013 年 30 巻 1 号 p. 19-26

詳細
抄録
現代のがん治療では, 外科治療, 化学療法, あるいは放射線療法が終了すると経過観察となるが, 多くのがん患者は経過観察期間においても, 再発・転移予防のための補完代替医療を求めている。 日本のがん医療における補完代替医療の利用実態調査によると, 44.6% の癌患者が漢方薬を含む補完代替医療を行っており, その目的はがんの進行抑制やがんの治療が上位を占めていた。 また, 厚労省がん研究助成の研究班が作成した 「がんの補完代替医療ガイドブック第 3 版」 では, がん治療における漢方薬に期待される役割として, 再発・転移の抑制があげられている。 これらのことから, がん患者及び医療現場において, 漢方薬によるがんの再発・転移予防に対する期待が高いことがうかがえる。 そこで, 漢方薬によるがんの再発・転移防止療法を目指して, 基礎研究を開始した。 我々はがんの転移に注目し, 転移を阻止する漢方薬を見出すことを目標に研究を行った。 特にがん転移と相関性の高いがん細胞の運動能に着目し, 独自のアッセイ系を用いてがん細胞の運動能を抑制する漢方薬を探索し, 麻黄湯を見出した。 麻黄湯は経口投与によって, 転移モデルマウスの肝転移を抑制した。 さらに, 麻黄湯の転移抑制メカニズムのひとつとして, 構成生薬の麻黄が, c-Met チロシンキナーゼ阻害作用を有し, 肝細胞増殖因子により誘導される c-Met 及び下流の Akt のリン酸化を阻害し, 運動能を抑制することを明らかにした。 これらの結果から, 麻黄湯及び麻黄を含有する漢方薬は c-Met 発現がん患者に対して有効に作用することが示唆された。
将来的には, これらの基礎研究成果を臨床へ応用し, 漢方薬によるがんの再発・転移防止療法へ発展させることをめざしているが, 現在の日本には, 漢方薬の新規効能効果を申請するためのガイドラインが存在しない。 このため基礎研究によって新たな薬効が見出されても, 臨床応用することは困難である。 米国では, 2004年に FDA によって天然物医薬品のためのガイドライン 「Guidance for Industry Botanical Drug Products」 が制定され, 現在, 漢方薬の臨床治験が開始されている。 漢方薬が新薬として米国から日本に逆輸入される前に, 日本においてもこのようなガイドラインの整備を一日も早く行う必要がある。
著者関連情報
© 2013 Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
前の記事 次の記事
feedback
Top