抄録
THR-221の300, 1000および3000mg/kg/dayを, 一群33-38例の雌マウスの妊娠6日目から15日目まで静脈内投与し, 母獣および次世代仔に及ぼす影響について検討した. 1. 一般状態, 体重推移, 摂餌量および肉眼所見に本化合物投与に起因すると考えられる影響はみられなかった. 帝王切開母獣の胸腺重量が300mg/kg/day群を除く薬物投与群で低下していた以外, 他の主要器官重量に差はなく, 黄体数, 着床数および妊娠期間にも薬物投与の影響はみられなかった. 2. 各群21-24例のF0母獣から得られた妊娠末期胎仔については, 3000mg/kg/day群で胎仔体重, 体長の低下がみられた以外, 薬物投与の影響はみられず, 外表, 内臓および骨格異常の出現頻度は対照群と差がなかった. 3. 一群12-14例の自然分娩F0母獣は正常に分娩し, いずれの実験群においてもF1新生仔の生後の発育分化, 反射機能, 生存率, 行動学的検査成績および生殖能力は良好で, 死亡した哺育仔の骨格観察やF1動物の剖検時にも薬物投与の影響はみられなかった. 4. 妊娠F1マウスおよびその胎仔や新生仔に薬物投与に起因すると考えられる異常はなかった. 以上のことからTHR-221の母獣への無影響量は300mg/kg/day, 次世代仔への無影響量は1000mg/kg/dayと推定される.