抄録
NS-21のラット甲状腺機能亢進の機序解明を目的として500mg/kgの投与量で13週間の反復経口投与を行った結果, 肝ミクロソーム中のT4UDP-GTの増加, 血清中totalT4およびfeeT4の減少ならびにTSHの増加が投与10日目および13週目で同程度に認められた。形態学的には甲状腺の機能亢進像も観察された。T4を補うことで甲状腺の機能先進が抑制されるか否かを検討する為, 15μg/animalをNS-21と同時投与した結果, 肝ミクロソーム中のT4UDP-GTは増加したが, 血清中totalT4およびfeeT4の減少はみられなくなり, TSHはむしろ減少した。また, 形態学的には甲状腺の機能先進像は観察されなかった。以上のことから, ラットにNS-21を投与すると, T4UDP-GTが誘導され, 血中のT4の代謝が先進した結果, 代償性に下垂体からのTSHの分泌亢進が引き起こされ, 甲状腺の機能亢進に至ると推察された。