抄録
著者らは脊髄損傷患者の季節的環境変化に対する適応に関して, 陳旧期にある患者を対象として研究を続けてきた。今回の報告は同一症例に対して, 基礎代謝を四季を通じて測定し, その結果を基に, 若干の考察を加えたものである。一般に脊髄損傷患者は基礎代謝が低値であり, 頸髄損傷患者は胸腰髄損傷患者よりも歴然と低値を示していた。季節間変動も, 頸髄損傷患者では健常日本人にみられる夏低, 冬高のパターンより逸脱する者が多く, 冬季に最低値を示す傾向があり, 量的な面のみでなく, 質的な面でも問題を有する者が多い。これは, 従来, 季節を通じて, 最も問題とされていた夏季の適応障害のみでなく, 冬季の適応にも大きな問題を有するものと考え, 検討を加えたが, 今後さらに, 頸髄損傷患者を中心に, 検討を加えるべき重要な課題であると考える。