Journal of UOEH
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ガスクロマトグラフィー(GC)およびガスクロ質量分析法(GC/MS)による体液中医薬品濃度の定量
野田 浩司野田 敦子松山 賢治顔 淑恵井口 定男
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1979 年 1 巻 3 号 p. 339-349

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抄録
薬物による臨床効果をモニタリングする有用な方法の一つとして, 唾液中の薬物濃度測定が考えられる。しかしながら, 唾液をこの目的に応用する際, 薬物の唾液中における変化様式(薬物の唾液中動態)を明らかにしておかなければ, 正しい定量法を確立することは不可能と云える。今回, 本態性高血圧症に広く使われているヒドララジン(HP)をモデル物質として選び, その唾液中における変化をガスクロマトグラフィーおよびガスクロ質量分析法により検討し, 新しい知見を得た。人工胃液(SGJ, 第8日局)を含むヒト唾液中および亜硝酸ソーダを投与したウサギの尿から, tetrazolo〔5,1-a〕phthalazine(Tetra-P)が主成績体とて生じることが明らかとなった。これは亜硝酸から生じたニトロソニウムイオンが, HPのヒドラジノ基をニトロソ化して不安定なアチド中間体を与え, 次いで閉環反応によって生成したと考えられる。次に酸を含まない唾液中で37℃に加温したところ, HPか唾液中でまずアセチル化されて生じるアセチル-HPが脱水閉環して生成する3-methyl-s-triazolo〔3,4-a〕phthalazine (MTP)と, これの唾液中酸化によるs-triazolo.〔3,4-a〕phthalazine(Tri-P)が主生成物であった。唾液中アセチル化に関する詳細については現在明らかではない。また、ウサギの尿からHPの代謝物の一つとして、発癌性および変異原性を有するヒドラジン(HZ)が検出されたことは注目すべきである。
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© 1979 産業医科大学
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