抄録
有機リン系の農薬であるフェニトロチオン(スミチオン®)について, 暴露濃度を2段階変化させて最大3ヵ月間ラットに反復吸入暴露し, 血漿および赤血球膜コリンエステラーゼ(ChE)活性の低下と暴露後の回復に及ぼす影響を調べた. ChE活性はフェニトロチオンの暴露濃度と暴露期間とにほぼ応じて低下したが, 暴露途中でChE活性抑制が緩やかになる傾向も見られた. さらに, 血漿ChE活性よりも赤血球膜ChE活性に著しい低下が見られ, その回復も遅いことが認められた. このため, 生体へのフェニトロチオン粉剤の反復暴露の指標には血漿よりも赤血球膜ChE活性の測定が有用であると考えられた.