Journal of UOEH
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脳卒中片麻痺患者のリハビリテーション Ⅰ.重心動揺と歩行能力
森田 秀明
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1989 年 11 巻 3 号 p. 261-273

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抄録
この研究の目的は, 脳卒中片麻痺患者の立位姿勢保持時の重心動揺軌跡距離(以下重心動揺)が, 歩行能力の予後予測因子として如何に貢献するかを検討することにある. 入院してリハビリテーション治療をした結果, 重心動揺は有意に小さくなり, 短期観察時点でも維持されていた. しかし深部知覚障害群での重心動揺は, 退院時や短期観察時点でもなおコントロールより大きかった. 入院時の重心動揺と入退院時の歩行能力との間には有意の相関関係を認めた. 多変量解析の結果, 入院時点での歩行能力, 罹病期間, 開眼時重心動揺と視覚系の抑制率が, 歩行能力の改善率の説明変量となることを認めた. さらに退院時歩行能力を目的変量とした回帰分析でも, 入院時の開眼時重心動揺は説明変量になることを認めた. これらの結果より, 臨床経験的に得られた予後予測因子の中で, 唯一の定量的データである重心動揺により歩行能力の改善と質的面を予測し得る可能性を示唆した.
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© 1989 産業医科大学
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