Journal of UOEH
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11 巻, 3 号
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  • 稲垣 彰, 北沢 右三
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 247-259
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/31
    ジャーナル フリー
    リターフォールを遷移に伴って変化する機能と考え, その量と質について2林分で比較した. リターフォール量の測定は, 暖温帯常緑広葉樹林帯に属する北部九州にある極相林と二次林で4年間にわたって行った. 両林分の現存量, 年間成長量, 純生産量は, 毎木調査と相対成長関係から推定した. 極相林では, それぞれ263.6 t ha-1, 4.0 t ha-1, yr-1 and 11.9 t ha-1 yr-1であり, 二次林では114.7 t ha-1, 2.5 t ha-1 yr-1 and 9.2t ha-1, yr-1であった. 大径の落枝を除いたリターフォール量は, 極相林では平均7.7t ha-1, yr-1二次林では平均6.5 t ha-1, yr-1であった. 落葉量は両林分とも年変動は小さかったが, 極相林では春に, 二次林では晩秋にピークをもつ規則的な季節変動を示した. 光合成器官のリターに対する非光合成器官のリターの量比は, 二次林に比べ極相林のほうが大きかった. 回転速度は極相林に比ベニ次林のほうが大きかった.
  • 森田 秀明
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 261-273
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 脳卒中片麻痺患者の立位姿勢保持時の重心動揺軌跡距離(以下重心動揺)が, 歩行能力の予後予測因子として如何に貢献するかを検討することにある. 入院してリハビリテーション治療をした結果, 重心動揺は有意に小さくなり, 短期観察時点でも維持されていた. しかし深部知覚障害群での重心動揺は, 退院時や短期観察時点でもなおコントロールより大きかった. 入院時の重心動揺と入退院時の歩行能力との間には有意の相関関係を認めた. 多変量解析の結果, 入院時点での歩行能力, 罹病期間, 開眼時重心動揺と視覚系の抑制率が, 歩行能力の改善率の説明変量となることを認めた. さらに退院時歩行能力を目的変量とした回帰分析でも, 入院時の開眼時重心動揺は説明変量になることを認めた. これらの結果より, 臨床経験的に得られた予後予測因子の中で, 唯一の定量的データである重心動揺により歩行能力の改善と質的面を予測し得る可能性を示唆した.
  • 森田 秀明
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 275-285
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺のリハビリテーションにおいて, 従来下肢機能回復の評価と歩行能力の評価との間には矛盾があることが指摘されている. 第一篇では, その矛盾の問題の一端を明らかにした. この研究の目的は, その矛盾の原因となっている機能評価法を再検討することである 。即ち機能回復テスト法を表面筋電図学的に検討し, そのテスト結果で十分としてカウントされない場合にも, 歩行能力に寄与するほどの潜在性機能回復が存在することを証明し, 一方, 独自の歩行能力評価基準とその特性を提示し, 同時にその臨床応用上の有用性を示し, 機能回復テストとの相関を示した. それらについて文献的に考察して, 今後さらに簡便で感度のよい機能障害や能力障害の評価法の開発の必要性を指摘した.
  • 法村 俊之, 土屋 武彦, 畠山 智, 山本 久夫, 岡島 俊三
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 287-297
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    トロトラスト患者の臓器吸収線量を推定するには, その主成分である232Thの体内分布量は勿論, 放射性崩壊によって生じる各娘核種の崩壊率比を知る必要がある. ラット尾静脈より注入されたトロトラストは, その約90%が生体内に沈着し長期間残留する. しかし, 娘核種のうちRaの約50%, Rnの10%が常時体外へ排泄されている. この動的平衡時における肝・牌臓での崩壊率比は, 224Ra/228Thがそれぞれ0.56, 0.54, 212Pb/228Thが0.28, 0.16であり, これまでに報告されたトロトラスト患者の剖検組織標本の測定による推定値に比し, 20-40%低い値を示した. 特に短寿命娘核種の崩壊率比の推定には死亡直後からの経時的な γ 線計測が不可欠である. さらに, リンパ節に顕著な沈着が認められ, 骨ではRaの持続的取り込みによる228Thの蓄積が確認された. 体外 γ 線計測による吸収線量推定には, これらの影響をも考慮した評価が必要である.
  • 藤代 一也, 森 晃爾, 井上 尚英, 崎村 とみ, 林 杰
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 299-303
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    酸化エチレンの肝シトクロームP-450に及ぼす影響を, ウィスター系雄性ラットの肝ミクロゾーム分画を用い, in vitroにて検索した. シトクロームP-450量は酸化エチレン・エタノール溶液によって減少したが, b5量は変化しなかった. 両者とも対照のエタノールとの間で差は認められなかった. 酸化エチレンガスのbubblingによってもシトクロームP-450は有意には減少せず, これはNADPH (1mM) 存在下でも同様であった. 酸化エチレン500mMという高濃度においても, P-450の減少はみられなかった. 以上より酸化エチレンが直接肝シトクロームP-450を破壊する可能性は少ないと考えられた.
  • 東 敏昭, 馬場 快彦, 藤野 昭宏, 桜井 治彦, 大前 和幸
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 305-311
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    就業人口の死因別死亡記録が使用しうる, 日本化学繊維協会および日本鉄鋼連盟に加入している企業に従事する作業者についてのSMR(standardized mortality ratio, 標準化死亡比)およびPMR(proportionalあるいはproportionate mortality ratio, 比例死亡比)を求めた. 1969年から1981年の全死亡についてのSMRは, 前者では34-41, 後者で50-81であり, 一般集団に比べ有意に低い値であり, 悪性新生物による死亡についても同様で, 強いhealthy worker effect(HWE)が示唆された. この値は, 就業年齢を対象とした場合, 米国の大企業を主体とした産業従事者集団についての報告と同様, もしくは低い結果であった. HWEは, 現役のことに大企業従事者の死亡を, 標準化死亡比を用いて一般人口のそれと比較した場合に観察され, 有害因子の影響の評価を目的として, 産業従事者集団と一般集団の比較を行う場合, 常に検討を加えるべき因子である. 本研究では, HWEの成因についての考察および産業保健管理の視点からの提言を試みた.
  • ―セクレチンとの比較―
    三浦 良史, 芳川 一郎, 大江 慶治
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 313-322
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    十二指腸アルカリ分泌機構におけるprostaglandin(PG)の関与, およびシステアミンによる十二指腸アルカリ分泌障害に対するPGならびにセクレチンの影響の比較に関して, ラットの十二指腸潅流ループ実験系を用い検討を行った. その結果, 16, 16-dimethylprostaglandin E2(16, 16-dmPGE2)持続静脈内投与により用量反応性に近位十二指腸粘膜アルカリ分泌は刺激された. また内因性PG合成阻害剤であるインドメサシン前処置により, アルカリ分泌は抑制され, 16, 16-dmPGE2投与によりこの抑制は完全に回復した. さらに, システアミン前処置時においても16, 16-dmPGE2は既報のセクレチンによる成績と同様に, 障害されたアルカリ分泌を回復させた. 以上のように, PGはセクレチンと異なり, システアミンによる障害の有無にかかわらず, 十二指腸粘膜によるアルカリ分泌を刺激する作用が認められ, このことから十二指腸粘膜アルカリ分泌機構におけるPGとセクレチン両者の関与機序は異なることが推測された.
  • 大西 晃生, 山本 辰紀, 村井 由之, 林 宏文, 佐々木 礼人
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 323-326
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    近年, ゲルマニウム含有健康食品の副作用が注目され, 特に二酸化ゲルマニウムが腎機能障害, 貧血, 末梢神経障害を惹起すると判断されている. 特に我々が注目した末梢神経障害の発症機序は明らかでない. 本研究では, 二酸化ゲルマニウムが, ラット, 猿に末梢神経障害を惹起するか否かを実験的に明らかにすることを目的とした. その結果, ラットにおいて, 二酸化ゲルマニウム1回当り100mg/kg, 週3回, 8週間の経口投与および1回当り400mg/kg, 週1回, 8週間の腹腔内投与では明らかな末梢神経障害が生じないと結論された.また猿において, 二酸化ゲルマニウム1回当り30-40mg/kg, 週5回, 8カ月間の経口投与では, 蛋白尿および血中尿素窒素の上昇は生じるが, 明らかな末梢神経障害は生じないと結論された. 二酸化ゲルマニウムのヒトおよび実験動物における末梢神経毒性については, さらに今後の研究が必要である.
  • 佐藤 斉, 小堀 一二, 原武 譲二
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻3 号 p. 327-332
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    肝内銅の定量値と組織標本内の銅顆粒の出現の程度との比較検討, ならびに各種銅染色の染色性の比較検討を試みた. 材料は病理解剖と外科的切除の肝であり, 肝細胞癌33例, 閉塞性黄痕28例, ウィルソン病4例, 原発性胆汁性肝硬変2例, 新生児・小児38例, 成人対照20例などを含む149例である. すべての標本に, HE染色, オルセイン染色, ロダニン染色を施し, 一部でさらに染色を追加した. 銅定量は原子吸光分析で行った. オルセイン染色による顆粒の量を-, +, ++, +++, の4段階に分けると,各々の銅の定量値の平均は24.9, 60.9, 158.9, 299.3μg/gであり, 両者は比較的よく相関した. しかし個々の例ではばらつきも多く, 顆粒の多い群で特にばらつきが大であった. 各種特殊染色中オルセイン染色は, 簡便さ, 感度, 特異性などの面で最も優れた染色法と考えられた. 病的状態での肝内銅分布は必ずしも均一ではなく, 多数標本のオルセイン染色による検討が望まれる.
  • 横田 晃, 梶原 秀彦, 奥田 真也, 松岡 成明, 塚本 良樹
    原稿種別: 症例報告
    1989 年11 巻3 号 p. 333-340
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    小脳出血で発症した5才男児に, 出血の原因として動静脈奇形と共に仮性動脈瘤が見出された. 仮性脳動脈瘤の多くは外傷に起因し, 脳表に発生するが, 本症例のように血管奇形に合併した非外傷性仮性脳動脈瘤は稀であり, 脳実質内に発生することが特徴である. さらに, 仮性動脈瘤が脳動静脈奇形のnidusに接して発生することは極めて稀で, 他に1例の基底核部発生例が報告されているだけである. 脳動静脈奇形に合併する仮性動脈瘤の発生機序および治療法について考察した.
  • 是木 一也, 坂本 久浩, 奥野 府夫, 筋田 和文, 江藤 澄哉
    原稿種別: 症例報告
    1989 年11 巻3 号 p. 341-345
    発行日: 1989/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    75歳の肝硬変を伴う肝細胞癌症例に対し, 肝動脈内留置カテーテルよりlymphokine activated killer(LAK)細胞とrecombinant interleukin-2(rIL-2)を投与する養子免疫療法(以下LAK療法)と肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization: TAE)の併用を行い, 治療終了後約6カ月間AFPの低下と腫瘍の壊死が持続したので報告する. 肝細胞癌患者におけるLAK療法については単独で行った場合抗腫瘍効果の持続が短く, TAEや抗癌剤との併用によってLAK療法の効果が増強されることが推測される.
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