肝内銅の定量値と組織標本内の銅顆粒の出現の程度との比較検討, ならびに各種銅染色の染色性の比較検討を試みた. 材料は病理解剖と外科的切除の肝であり, 肝細胞癌33例, 閉塞性黄痕28例, ウィルソン病4例, 原発性胆汁性肝硬変2例, 新生児・小児38例, 成人対照20例などを含む149例である. すべての標本に, HE染色, オルセイン染色, ロダニン染色を施し, 一部でさらに染色を追加した. 銅定量は原子吸光分析で行った. オルセイン染色による顆粒の量を-, +, ++, +++, の4段階に分けると,各々の銅の定量値の平均は24.9, 60.9, 158.9, 299.3μg/gであり, 両者は比較的よく相関した. しかし個々の例ではばらつきも多く, 顆粒の多い群で特にばらつきが大であった. 各種特殊染色中オルセイン染色は, 簡便さ, 感度, 特異性などの面で最も優れた染色法と考えられた. 病的状態での肝内銅分布は必ずしも均一ではなく, 多数標本のオルセイン染色による検討が望まれる.
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