抄録
作業環境中で発生する有機溶剤蒸気の濃度を定量する方法として, 蒸気を活性炭チューブに吸着させ, 後に脱着して定量する固体捕集方法が汎用されている. 脱着には二硫化炭素などの溶媒を用いて抽出する方法が用いられるが, 一般に溶媒は有害であるため, これに替わる定量法が望まれる. 本報では, 活性炭に吸着した溶剤を, 加熱脱着により定量する方法について検討した. 溶剤が熱分解を起こさない程度の比較的低温で脱着を行い, 脱着率が低い溶剤については, その値を物質収支および吸着等温線に基づいて計算する方法を提案した. 単一成分および2成分混合溶剤系について, 数値計算による方法, 簡易解析法の2種類の加熱脱着モデルを提案し, それぞれ実験値と比較検討した. 脱着率の実験値と推算値は比較的よい一致を示し, 脱着率が低い場合でも, 脱着量の実験値と脱着量の推算値とから空気中の蒸気濃度を測定することが可能であることがわかった.