Journal of UOEH
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VDTと妊娠に関する諸障害
―疫学的諸研究の概観―
アリソン マクドナルド
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1990 年 12 巻 2 号 p. 143-147

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抄録
妊娠初期におけるVDT使用と流産などの関係が取り沙汰されて久しいが, はたして実際にVDT使用が妊娠に何らかの障害を与え得るのか, そのメカニズムは明らかではない. そこで, 1970年代後半から80年代に, スウェーデン, ノルウェイ, フィンランド, アメリカ, カナダで独自に行われた調査を比較検討した. その結果, 各病院に登録されている流産, 先天異常などの出現率と, 母親のVDT使用頻度との関連をみたが, 結果は否定的なものであった. さらに, 妊婦に行った妊娠前・後の質問紙調査においても, ほとんどが妊娠障害とVDTとの関係を否定する結果が得られた. しかし, 質問紙調査では, 調査手続の影響で回答に偏りが生じた可能性も考えられた. そこで, 調査手続を改善して行ったカナダでの調査では流産とVDT使用との間に関連がみられた. しかしながら, 先天異常, 低出生体重などとVDT使用には関連がみられなかった. 従って, 現段階ではVDT使用によって妊娠に危険が伴うと結論することはできないと考えられる.

(この内容は1989年10月6日に行われた特別講演「VDT作業の健康影響」に基づくものである)
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© 1990 産業医科大学
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