Journal of UOEH
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ジェイムズ朝演劇と検閲
太田 一昭
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1990 年 12 巻 2 号 p. 239-249

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抄録

ジェイムズ一世はイギリス国王として即位するとロンドンの主要劇団に王室の庇護を与えた. ジェイムズ朝の検閲制度はこの庇護という間接的支配とあわせて, 演劇の厳しい統制-少なくともエリザベス朝よりはるかに厳しい統制-を達成した-こう考える学者がいる. しかし実情はむしろ逆ではなかったか. ジェイムズ朝体制は劇作家・役者たちのともすれば転覆的な演劇活動を十分に抑え込めなかったのではないか. 当局の忌諱に触れた役者たちの違背行為・筆禍事件がジエイムズ朝には目立っている. おそらく検閲制度が十分に有効に機能していなかったのだと思う. それは, 宮廷における相対立する「派閥」の存在に象徴されるように, ジェイムズ朝権力構造が一枚岩的でなかったことに多少とも起因しているだろうし, あるいは「寛大」な国王ジェイムズの個人的性格によるのかもしれない. それともジェイムズは役者たちの大胆かつ奔放な行動を抑え込むことができずに, 寛容な統治者を演じることを選んだのだろうか一罪を許す権能が彼自身に帰属することを示すことによって, 己れの統治者としての限界を隠蔽するために.

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© 1990 産業医科大学
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