抄録
産業医科大学は, 産業医の養成を目的の一つとして設立されたが, それを十分理解せずに入学する学生が少なくない. そこで低学年の段階で学生に産業医の正しいイメージと, 産業医への動機づけを与えることを目標に, 平成元年度後学期に2年生の医学概論授業として「産業医学入門」と題する講義シリーズを組んだ. そして, この授業の教育効果を判定する目的で, 授業の2回目と最後に「『産業医』という語からイメージする言葉」についてのアンケート調査を, いわゆる「文殊カード」を使用し実施した. また学生に今回の授業で自分の「産業医」のイメージに変化があったかを自己評価させた. 以上の結果, 授業後に「産業医」の肯定的イメージの増加がみられ, 情報の提供が, イメージの変化に大きく影響し, 学生にも強く望まれていることが分かった. しかし, 一貫して強い否定的なイメージを示す学生には別の授業方法や大学全体としての対応の改善を考える必要があろう.