抄録
海洋科学技術センターで施行された潜水シュミレーターを用いた実験に参加し, 水深180mの高圧環境が事象関連電位P300に与える影響を観察した. 事象関連電位はコントロールとして潜水開始前と180mに達した時, 減圧時90m, 70mの合計4回測定した. P300の潜時は, 被検者であるプロダイバーの2人とも, コントロールに比して180m, 90mまで著明に延長し, 減圧70mに至って, 潜時の延長はゆるやかとなった. 本実験の結果はこのような条件による高圧環境がヒトの認知機能に影響を及ぼすことを示唆すると共に, ダイバーにとって重要な問題である高圧神経症候群の予知にP300が有用である可能性を示した.