抄録
カドミウムは, 発癌性を示すばかりでなく, 中枢神経系に病変を起こすことも報告されている. 神経芽細胞種由来の培養細胞であるGOTO細胞にカドミウム処理をし遺伝子発現への影響をみた. カドミウム投与後, メタロチオネイン, hsp70, hsp90, およびhsp32mRNAの増量がみられ, 熱ショック蛋白質のmRNAは, 6時間でピークを示したが, メタロチオネインのmRNAは, さらに15時間まで増え続けた. これらの条件下でN-mycとMDRl(多薬剤耐性遺伝子)のmRNAも増量し約6時間でピークがみられた. メタロチオネインや熱ショック蛋白質の活発な誘導パターンからみてN-mycやMDRlのmRNAの増量は単にカドミウムによる細胞毒性のため, これらの遺伝子の抑制機構が脱落したためとは考えられない.