Journal of UOEH
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臨床的に血管腫と診断された肉腫様肝癌の1剖検例
松岡 徳浩山本 富淑弥原武 譲二橋本 洋鵜木 秀明
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1992 年 14 巻 4 号 p. 297-303

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抄録
臨床的に肝血管腫が疑われ剖検で肉腫様肝癌と診断された1例を報告した. 症例は69歳女性で, 主訴は全身倦怠感である. 1988年12月全身倦怠感のため入院し胆石, 肝硬変と肝S8の腫瘍を指摘された. AFPは陰性であり血管造影の結果肝血管腫と診断されたため腫瘍に対しては未治療であった. 1991年3月12日に肝機能悪化のため再入院し, 非代償性肝硬変による肝不全のため4月1日に死亡した. 剖検時肝S8に最大径3cmの境界明瞭な腫瘍が見られた. 壊死と硝子様化が著明であったが, 辺縁部には紡錘形細胞の増殖よりなる肉腫様部分が見られ, また一部には索状配列を示す変成壊死の目立つ肝細胞癌の像も認められた. 紡錘形腫瘍細胞の一部はサイトケラチン陽性を示した. 以上の所見より本腫瘍は肉腫様変化を示す肝細胞癌と診断された. 肝硬変を背景とした肝腫瘤を見た場合, 画像や血清学的所見が典型的ではなくとも, 肝細胞癌も考慮すべきと考えられる.
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© 1992 産業医科大学
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