Journal of UOEH
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ラット実験腸発癌における発癌剤の比較およびオルニチン脱炭酸酵素活性の意義
平田 敬治伊藤 英明永田 直幹黒田 裕介大里 敬一
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1994 年 16 巻 2 号 p. 153-166

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抄録
1,2-dimethyl hydrazine (DMH), N-methyl-N-nitrosourea (MNU) および両者の併用によるラット腸発癌について検討した. DMH皮下投与では十二指腸から大腸まで広範に腫瘍を認め, MNU注腸投与では遠位大腸に限局していた. 両者併用群での腫瘍発生はMNU投与群に類似していた. 発生腫瘍の病理所見はヒト消化管腫瘍に類似していた. ポリアミン代謝の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素 (ODC) 活性を遠位大腸で測定したが,腫瘍組織のODC活性は正常粘膜より有意に高く, 組織悪性度に比例し亢進していた. また担癌ラットの正常粘膜でのODC活性は非担癌群に比べ高値を呈し, 腫瘍個数と正常粘膜部の活性に相関関係を認めた. 以上より, DMH, MNUはともに腸発癌モデルとして有用な方法であり, また大腸粘膜ODC活性の亢進は腫瘍性変化における生物学的表現形質の一つであり, 大腸癌に対する高危険粘膜の検出のための生物学的指標として利用できると思われる.
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© 1994 産業医科大学
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