Journal of UOEH
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正中部に病変が限局したび慢性脳損傷(Diffuse Brain Injury)の一剖検例
―DAI(Diffuse Axonal Injury)との異同について―
女屋 光基冨永 格加藤 雄司木村 寿子笠原 麻里杠 岳文鹿島 晴雄
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1995 年 17 巻 1 号 p. 39-47

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抄録

全経過1年9カ月の頭部外傷の剖検例を報告した. 受傷時意識レベルGlasgow Coma Scale5点. CT上脳室内出血・脳挫傷がみられ, 事故当日脳室ドレナージ術施行. 徐々に意識レベル改善するも, 性格変化・記銘力障害等残存. 脳室は漸次拡大傾向. 脳重1180 g. 脳表には左右直回の陳旧性挫傷程度. 割面では脳梁・脳弓等にマクロファージを伴うグリア瘢痕. 深部白質の軽度髄鞘淡明化. 前交連の軸索断裂. 内側視床の損傷. 本例は意識障害が遷延したが骨折もなく, 脳の正中部に病変が集中し, 受傷時に強力な回転角加速度が加わったことを推測させ, 臨床的にはび慢性脳損傷(diffuse brain injury)に該当し, DAI病変を生じる可能性が示唆される. しかし, 病理学的には深部白質の病変は軽微で, AdamsのいうDAIとはいえない. 本例の示す病変のうち正中部については受傷時の外力による損傷で生じるが白質については外傷に伴う脳腫脹等の二次的要因が考えられ, "び慢性大脳白質変性" がDAIに本質的な病変であるか否かを再検討する必要性につき, 自験既報告例と比較対照し論じた.

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© 1995 産業医科大学
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