Journal of UOEH
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坐骨神経挫滅後の有髄線維の変性および再生に対するアクリルアミドの投与効果
C57BL/OlaマウスとC57BL/6Jマウスとの比較
赫 秋月韓 漫夫大西 晃生山本 辰紀村井 由之
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1997 年 19 巻 4 号 p. 265-275

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抄録

アクリルアミド(ACR)が, 変異C57BL/Ola(Ola)マウスと正常C57BL/6J(6J)マウスにおいて, 坐骨神経挫滅後の有髄線維の変性・再生過程に及ぼす影響の差異を明らかにすることを本研究の目的とした. この結果は, ヒトの末梢神経障害における個体間の易障害性の差異の理解にも有用であると考えられる. 坐骨神経の挫滅処置14日後に, 挫滅部位近位端より5mm遠位部で, その有髄線維を組織計測学的に評価した. Olaおよび6JマウスをそれぞれACR投与群(挫滅日より隔日で計7回のACR50mg/kg皮下注射, n=6)と生理食塩水(生食)投与群(n=6)に分けた. Olaマウスでは生食およびACR投与群に共通して大径, 小径両有髄線維の著明なウォーラー変性の進行所見は認められず, 6Jマウスに比較して有髄線維の変性が遅延していた. 一方, 6Jマウスでは生食およびACR投与群に共通して大径, 小径両有髄線維の変性後に再生した小径有髄線維が認められた. Olaマウスにおいて, 組織計測学的パラメーターのいずれについても生食投与群とACR投与群の間に差が認められなかったことより, ACRはOlaマウスのウォーラー変性過程に有意な影響を及ぼさないと判断された. 一方, 6Jマウスでは, 再生小径有髄線維数がACR投与群で生食投与群より低値を示したことより, ACR投与により有髄線維の再生が抑制されたと判断された. 再生有髄線維の直径分布の検討から, この再生抑制は一部の軸索の出芽および伸長の遅延または欠如によって生じると判断された. 末梢神経有髄線維の変性および再生過程の研究では実験動物のsubstrainの差がその結果に大きな影響を及ぼすと判断される.

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© 1997 産業医科大学
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