Journal of UOEH
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肝疾患と生体のヘム合成系
-とくに赤血球内ALA-S, ALA-D, FEP, ZPとALA-U, CP-Uについて-
田岡 賢雄狩野 徹也山田 伸次
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1980 年 2 巻 3 号 p. 347-360

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抄録
肝疾患の多くの例にみられる貧血の機序を解明する目的で各種肝疾患症例を中心に赤血球内ヘム合成系の動きについて検討してみた. すなわち骨髄血ならびに末梢血中のδ-am-inolevulinic acid synthetase(ALA-S)活性, δ-aminolevulinic acid dehydratase(ALA-D)活性, free erythrocyte protoporphyrin IX(FEP)量, zinc protopor-phyrin IX(ZP)量ならびに尿中δ-aminolevulinic acid(ALA-U)量, 尿中coproporphyrin(CP-U, copro-U)量についてしらべたところ, ALA-S活性は肝硬変症・慢性肝炎・鉄欠乏性貧血・鉛作業従事者で活性上昇を示し, ALA-D活性は鉄欠乏性貧血では上昇したが肝疾患では有意の変動を示さず, ALA-U量は鉛作業者では増加したが肝疾患では有意な変動はみられず, CP-U量も肝疾患では増加傾向を認めたが有意ではなかった. FEP量は肝硬変症・慢性肝炎・原発性ならびに転移性肝癌で増加した. ZP量はFEP量にほぼ比例して変動を示した. 一方, これらヘム合成系の諸因子の肝疾患における変動は血清トランスアミナーゼ活性をはじめとする各種肝機能検査との間に有意の相関を示さず, また貧血の程度とも並行しないことよりその解釈が難しいが, 慢性肝炎・肝硬変・肝癌においてこの順序でALA-S活性, FEP-ZP量が増加していることはこれらの疾患においてヘム合成系の最終ステップであるプロトポルフィリンに二価の鉄イオンがキレートされてヘムが合成される過程の障害を強く示唆するものである.
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© 1980 産業医科大学
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