Journal of UOEH
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肝化学発癌感受性に差異を示すラットの肝における薬剤耐性遺伝子発現の検討
後藤 貞夫戸高 奈苗晏 穎深町 幸代安部 哲哉東 監
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1999 年 21 巻 4 号 p. 265-276

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抄録

近交系の化学発癌耐性DRHラットは, クローズド・コロニーの呑竜ラットから低いGGT誘導能と3'-メチル-DABによる肝の発癌が顕著に低いことを指標として選択・樹立された. これまでに我々は呑竜ラット肝においては3'-メチル-DABによるDNA傷害および細胞毒性がDRHラット肝と比べてより高度であることを観察してきた. 本研究では細胞毒性を示す薬物に対する耐性機構に関連した遺伝子のmRNAレベルをRT-PCR法を用いて検討した. 予想に反して, 以下の種々の条件下における薬剤耐性関連遺伝子のmRNAに関しては, 両ラット肝の間で, 大きな差異は存在しなかった. すなわち, i)3'-メチル-DAB投与後のmdr1 mRNAの誘導, ii)3'-メチル-DAB処理によるMLP-2 mRNAの減少, iii)胆汁うっ滞によるMLP-2 mRNAの誘導, およびiv)cMOAT遺伝子の構成的発現レベル等で, 両ラット肝においては, ほぼ同じレベルのmRNAが認められた. 一方, 3'-メチル-DAB投与後のp53 mRNAおよび蛋白質レベルは, 呑竜ラット肝において, より著明な増量を示したので, 呑竜ラット肝では3'-メチル-DABに対してDRHよりも高い感受性を有していることが示された. 結論として, 少なくとも今回調べた範囲内では薬剤耐性機構に関する遺伝子の発現と両ラット間での肝発癌感受性の相関関係は存在しなかった.

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© 1999 産業医科大学
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