Journal of UOEH
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産業医科大学病院におけるMycobacterium chelonaeによる内視鏡自動洗浄機の汚染とその対策
野村 和代小川 みどり常 彬宮本 比呂志田辺 忠夫谷口 初美松本 哲朗
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2000 年 22 巻 2 号 p. 159-165

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抄録

近年, 気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid, BALF)の抗酸菌汚染のため診断・治療に混乱が生じている. 産業医科大学病院でも1998年より同様の問題が生じたため, 原因を究明し対策を講じた. 当院の気管支鏡および内視鏡自動洗浄機よりサンプリングを行い, 鏡検法(Ziehl-Neelsen染色, 蛍光染色)と培養法(小川培地, Middlebrook7H9液体培地)により抗酸菌の汚染状況を調査した. その結果, 洗浄機のシンク, 水タンク, 排水で抗酸菌の汚染が顕著であり, 洗浄機内消毒液中よりも抗酸菌が分離・培養された. 洗浄機への供給水からは抗酸菌は検出されなかったが, 気管支鏡の生検孔より抗酸菌が検出された(塗抹陽性, 培養陰性). 分離された菌(28株)は, 集落の性状, 生化学的性状, 抗酸菌に特異的なプライマーを使用したPCR法, および16S rRNA遺伝子の塩基配列より, すべてMycobacterium chelonaeと同定された. 5株を選び消毒薬感受性試験を行ったところ, 1株が2%グルタールアルデヒドに抵抗性を示す耐性菌であった. しかし, この株は70%エタノールには感受性を示した. 対策として, 業者により洗浄機全体の3.5%グルタールアルデヒド消毒洗浄を行い, また業務終了後にシンクを毎日70%エタノールで消毒することにより, 内視鏡自動洗浄機の除菌に成功した. BALFの抗酸菌汚染も改善され診断・治療上の混乱も見られなくなった.

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© 2000 産業医科大学
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