抄録
2000年3月16日に国立がんセンターにおいて, シンポジウム「がん登録等疫学研究における個人情報保護」が開催され, 近く法制化が見込まれる個人情報保護の潮流の中で, がん登録等疫学研究における個人情報利用をどう捉えるかについて検討された. 国内外13名のシンポジスト, コメンテータからの発言と総合討論の結果, わが国のがん登録を効果的に展開するために, 早急な法整備が必要なこと, がん登録等の公衆衛生活動や倫理委員会等で承認された疫学研究には, 患者のインフォームドコンセントを前提とせずに個人健康情報を利用できる特例措置を設けるべきこと, および, これらの社会的措置を含めた倫理ガイドラインをわが国でも設定すべきであること等が提案, 議論された. 今後も, この種の講演会やシンポジウムが一般公開のもとで頻繁に開催され, 建設的な議論をふまえて, 適切な個人情報保護制度が作られることが望まれる.