Journal of UOEH
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umu C遺伝子発現に対するジエチルヘキシル・フタレートの促進作用
岡井 康二岡井(東) 紀代香
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2000 年 22 巻 4 号 p. 305-315

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抄録

ジエチルヘキシル・フタレート(DEHP)はポリ塩化ビニル系のプラスチックに最もよく用いられる可塑剤であるが, 最近では環境ホルモンの一つとして注目されている. 一方, DEHPは, 少数の研究結果を除けば過去の多くの研究結果からその遺伝毒性はほとんどないか, 極めて弱いと評価されている. そこで著者は, 比較的新しい遺伝毒性の評価システムであるバクテリアのumu C遺伝子の発現系を用いてDEHPの遺伝毒性を再評価した. その結果, DEHP単独ではこれまでの報告と同様に有意の遺伝毒性は認められなかったが, ラットの臓器のホモジェネートのS-9画分を添加すると有意のumu C遺伝子の発現が認められた. 特に膵臓由来S-9の活性が最も高く肝臓・小腸由来のS-9も有意の活性を示した. しかし腎臓・肺のS-9は活性を示さなかった. これらの活性の程度は, DEHPの代謝に関与する各臓器のリパーゼの活性と相関した. そこでブタ膵臓由来のリパーゼをDEHPとともに添加したところ, 有意の活性を示した. さらにin vivoでのリパーゼ活性に影響を与えると考えられる胆汁酸(コール酸・デオキシコール酸)を上記リパーゼとともに添加したところ, さらにその活性を促進した.
以上の結果よりDEHPは, 化合物単独では遺伝毒性はほとんど認められないが, ある特定の臓器由来のリパーゼやその修飾因子が存在すると, かなり強い遺伝毒性を示す結果が示唆された.

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© 2000 産業医科大学
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