抄録
6名の喫煙者と10名の非喫煙者を対象として, 漸増運動が体力や末梢循環(酸素動態)におよぼす影響について調べた. 酸素動態の計測には近赤外線分光装置を用いて右外側広筋の酸素化ヘモグロビン濃度(O2Hb)の変化量を測定した. その結果80%HRmax到達時や血中乳酸濃度2mmol/ℓ時の仕事量, VO2やHRには2群間で有意差はなかったが, 運動強度によってはRRや酸素当量が喫煙者において著明に高い傾向がみられた. O2Hbは喫煙者の内5名では運動の強度が上がるにつれて減少し続ける傾向がみられたが, 非喫煙者では8名で運動中を通じて増加し続けた. 喫煙者では中等度の運動強度でも筋の酸素需要に供給が追いついていない可能性がある. 喫煙者が運動を行う際には中等度の強度であっても末梢循環動態に十分な配慮が必要であることが示唆された.