2008 年 30 巻 3 号 p. 279-292
過度に仕事に傾注することを示すオーバーコミットメントは, 努力-報酬不均衡職業性ストレスモデルに組み込まれている概念で, 危険な行動パタンとされている. 一方, 仕事上のモチベーションは, 就業者の生産性や良好なメンタルヘルスと関連があるとされている. 556名の就業者に, オーバーコミットメント, 仕事上のモチベーションと精神的健康度を測定するGHQ28を含む調査票を適用した. パス解析により, オーバーコミットメントとモチベーション間には正の相関があるものの, 精神的健康度との関係は両者で異なることが示された. 過度に仕事に傾注するような行動パタンはその行動変容を図ることが, 一方, 仕事上のモチベーションはその醸成を図ろうとする試みが, 就業者のメンタルヘルス向上にそれぞれ寄与する可能性があるので, 両者を弁別して対応することが望まれる.