Journal of UOEH
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運動鍛錬者における急性メンタルストレス中の無毛部と有毛部の皮膚血管反応
矢野 弘樹曽根 涼子山崎 文夫
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2009 年 31 巻 4 号 p. 325-337

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抄録
急性メンタルストレスは交感神経活動を増加させ, 様々な器官の血管運動調節に影響を与える. 本研究では, 急性メンタルストレス中の末梢血管調節におよぼす運動トレーニングの効果について理解を深めるために, 運動鍛錬者と非鍛錬者の暗算(MA)中の皮膚血管反応を比較した. 8名の運動鍛錬者(T群)と8名の非鍛錬者(UT群)が, 中性温度(28℃)条件下で仰臥位にてMAを2分間連続して行った. 皮膚血流量(レーザードップラー流量法)と局所温度が無毛部(手掌, 足底)と有毛部(前腕, 腓腹)でモニターされた. 皮膚血管コンダクタンス(CVC)は平均血圧(トノメトリー法)に対する血流量の比率から評価された. 局所発汗量(SR)は足底部と腓腹部で測定された(換気カプセル法). T群において, 無毛部のCVCはMA中に減少したが(P<0.05), 一方UT群において, ストレスによるCVCの減少は一過性であり, MA中に徐々に回復された. いずれのグループにおいても, 有毛部のCVCの変化パターンは無毛部のものと本質的には類似していたが, 有毛部のCVCの減少は無毛部のそれらより小さかった(P<0.05). 無毛部(特に足底部)の局所温度は, UT群よりもT群で高値(P<0.05)を示した. 足底部と腓腹部のSRはMA中に増加したが(P<0.05), 2グループ間で差異はみられなかった. これらの所見は, 身体的トレーニングが有毛部ではなく無毛部の皮膚温を高めるように作用すること, さらにその皮膚温の変化が急性メンタルストレス中の無毛部と有毛部の交感神経性皮膚血管運動調節に末梢レベルで影響することを示唆している.
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© 2009 産業医科大学
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