抄録
我々は大動脈弁狭窄症を伴った肺毛細血管腫症の1剖検例を経験したので報告する. 症例は86歳日本人女性, 大動脈弁狭窄症による慢性心不全にて血液透析を施行中に, 突然死となった. 剖検すると, 大動脈弁の高度な狭窄と, 両心室壁の肥厚を伴った高度な心肥大とが認められた. 肺の病理組織学的所見では, ヘモジデリンを貪食した肺胞内マクロファージの集簇を伴って, 肥厚した肺胞壁における毛細血管のびまん性増生が認められ, 肺毛細血管腫症に一致する像であった. 以上より当症例は, 大動脈弁狭窄症により長期間慢性的に持続した肺うっ血が, 肺毛細血管腫症を引き起こしたものと考えられた.