Journal of UOEH
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特発性間質性肺炎の治療中に,左大腿骨頸部骨折を契機に急激な呼吸不全を呈した脂肪塞栓症候群の1例
小田 桂士川波 敏則矢寺 和博生越 貴明神崎 未奈子長田 周也西田 千夏山崎 啓石本 裕士迎 寛
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2011 年 33 巻 3 号 p. 255-261

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抄録

症例は78歳女性. 2003年に前医にて特発性間質性肺炎と診断され, プレドニゾロン内服が開始されたが緩徐に呼吸不全が進行し, 2007年には在宅酸素療法が導入され, 外来通院していた. 2010年4月X日に転倒し, 同日に左大腿骨頸部骨折の治療目的で当院に救急搬送された. 入院時, 呼吸状態は比較的安定していたが, 第2病日から急激な悪化を認め, 第4病日に人工呼吸管理を要した. 間質性肺炎の急性増悪が疑われたが, D-dimer値の経時的な上昇や, 眼瞼結膜や頸部の点状出血斑, 気道検体から肺胞マクロファージの脂肪滴の貪食像を認めたことから, 大腿骨頸部骨折に伴う脂肪塞栓症候群と診断した. 呼吸管理に加え, ステロイド治療, シベレスタットナトリウムの投与により, 呼吸状態の改善を認め, 第21病日に退院となった. 本症例は, 特徴的な皮膚・粘膜所見などの丁寧な診察および気道検体からの肺胞マクロファージの脂肪滴貪食像が鑑別診断に有用であった.

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© 2011 産業医科大学
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